瓊林院の沿革
古老の伝ふる所に依ると、昔々白川の中心地は中村寺沢付近に在り
後、藤原惟家の孫白河十郎有忠の時、下に移り堀の内転じて横内と変わり
又、寺沢郷蔵田堀の内地名今に伝う。
嘉暦三年有忠堀の内伝々の記諏訪社に白川竹淵の字を見る。
白川十郎有忠長福寺殿鐵山勇然大禅定門の氏寺而建立是が瓊林院の始まり也。
仁芳和尚見写記
長福寺時代
元応年中(鎌倉時代後期1319~20年)より
上記は天明年間に破損した半鐘の銘を仁芳祖岳和尚が書き写した記録の一節です。これによれば当寺は今より700年以上の昔よりこの地に在り、その当時に白河郷地頭であった藤原惟家の孫、白河十郎有忠が「長福寺殿鐵山勇然大禅定門」より代々一族の香華寺(菩提寺)として「松泉山長福寺」という号で現在地より西南におよそ三丁(300メートル)の中村、寺澤付近に建立され宗派は臨済宗建長寺派に属していました。
天文年中(1532~54年)
現塩尻市、桔梗ケ原における武田信玄と小笠原長時の戦いや、午伏寺川の氾濫など幾多の理由によって荒れ寺となり長福寺殿様のお位牌をはじめ当寺の沿革を知る古文書、開山諸書付なども失われたため創建後のおよそ300年にわたる開山様、歴代の住職についても不明、現在に残る旧寺の痕跡としては、わずかに上堂(古御堂・現白川公民館)、寺沢の地名を残すのみとなっております。
寛永6年(1629年)
諏訪慈雲寺泰嶺玄末和尚(文久2年(1862年)に『佛慧放光禅師』の勅号を賜りました。)の法嗣〈はっす〉(師から仏法の奥義を受け継いだもの、弟子の意味でつかわれます)月巌祖芳和尚が住まわれて、諸堂を再建した後、師であるを泰嶺玄末和尚を中興の開山とし、自らは二世となり、この時に諏訪温泉寺末となり、臨済宗妙心寺派に属すことになりました。
寛文9年(1669年)
實巖玄尤和尚代、2月24日当寺より北西の百瀬の常照庵(現在の正念寺)西裏に高島藩主諏訪家三代忠晴公が信仰した箱清水観音を安置する観音堂を建立され、諏訪高島城主乾徳院様より、当寺はその別当職(管理者の意味)に任ぜられ以後長福寺の持ち堂となりました。
松泉山瓊林院
寛文13年(1673年)
諏訪二代出雲守忠垣公の三男、従五位下諏訪壱岐大守朝三太夫源頼久公(頼久院殿蒙山獨了大居士)が当地に五千石を拝領後、信仰ことに厚く、檀越を以って当寺に帰依されました。
元禄14年(1701年)
10月6日頼久公の娘、脇坂主計藤原安秋の室(瓊林院殿梅窓貞香大姉)が亡くなり12月6日に当寺にお位牌を安置し、仏具、田地を寄付されました。
元禄15年(1702年)
松翁祖貞和尚代、頼久公は自らが中興の開基〈かいき〉(寺を建てるために資金や資材を提供した人)となって寺を現在地に移築させ「松泉山瓊林院」と号を改め、瓊林院殿様一周忌法要を厳修し以後代々の納牌所(菩提寺)となりました。
なお、瓊林院殿様の墓碑は、高野山奥の院、諏訪家の墓所にあります。
享保19年(1734年)
孔翁祖丘和尚代、1月12日に本堂上棟の儀を行い再建、半鐘の鋳造をおこないました。
文政2年(1819)
仁芳玄諾和尚代、諸堂伽藍の修覆改築をなし、諏訪温泉寺願王全提和尚の法を嗣いで、中興の開山となりました。
明治18年(1885)より明治22年(1889)まで
椿梁全肯和尚代、豊丘・中山・小池・赤木・白姫・瀬黒・竹淵連合村庁が当寺に設置され行政事務が執り行われました。
明治以降の瓊林院
大正、昭和、平成の時代を経て、宗元泰翁和尚、良行大欽和尚、正堂行真和尚の歴代住職、檀信徒の協力で薬師堂改築、庫裡大書院新築など、堂宇の整備が逐次進められ、平成9年(1997)には老朽化した本堂、開山堂を新築し面目を一新、平成10年(1998)10月落慶法要に合わせ開山泰嶺玄末和尚三百五十遠年諱、瓊林院殿様・頼久院殿様三百遠年諱歴代和尚報恩合斎会、大欽和尚大祥忌(三回忌)並びに行真和尚晋山式を挙行し、今日に至ります。
瓊林院の宗門について
一、宗 派
臨済宗妙心寺派(禅宗)
一、宗旨及び教義
お釈迦様の正法〈しょうぼう〉を相承〈うけつ〉がれた初祖達磨大師〈しょそだるまだいし〉や
宗祖臨済禅師〈しゅうそりんざいぜんじ〉を経て開山無相大師〈かいさんむそうだいし〉に及ぶ
一流禅を宗旨〈しゅうし〉及び教義〈きょうぎ〉とします。
一、本山及び寺院
正法山妙心寺(京都花園)を大本山とし建武4年(1337)花園法皇の勅願〈ちょくがん〉に
よって創建され、開山無相大師の法流は四派〈しは〉に分かれて、
全国3400ヶ寺に広がっています。
一、本 尊
釈迦牟尼世尊〈しゃかむにせそん〉を大恩教主と仰いで尊崇し、因縁により釈迦如来、
観世音菩薩等をおまつりします。
(当寺は創建の因年により聖観世音菩薩をおまつりしております。)
一、経 典
お釈迦様の正法をそのまま心に頂く宗旨ですから、特に教典を一定しませんが、
当寺では主に般若心経・大悲咒・観音経・開甘露門・坐禅和讃・菩提和讃などをお誦みします。
一、宗 風
宗門は僧俗ともに禅の安心を求める同心同行であり、開山無相大師の「請う其の本を務めよ」の
御遺誡〈ごゆいかい〉と、開基花園法皇の「報恩謝徳」〈ほうおんしゃとく〉の聖旨〈せいし〉
を体して仏法興隆を実践する教団であります。
一、信 条
自身仏であることを固く信じて坐禅にはげみ、本当の自分に目ざめ、どんな苦難にもくじけず
常に脚下〈きゃっか〉を照顧〈みつ〉めてくらしを正し、生かされている自分を感謝しつつ
世のため人のために尽くします。
一、檀 信 徒
檀信徒は花園会員として和やかに力を合わせ、社会を「心の花園」にと念じて正法をひろめる
ようつとめます。